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組み込み系の可用性冗長化構成、3つの落とし穴

eye-catching image 信頼性・安全

組み込みシステム開発の世界に足を踏み入れると、必ずと言っていいほど耳にする「可用性」という言葉。特に人命に関わる医療機器や、社会インフラを支えるシステムにおいては、システムの停止は許されません。だからこそ、可用性を高めるための冗長化構成は非常に重要な技術となります。しかし、この冗長化構成、一見すると万全に見えても、実は落とし穴がたくさん潜んでいるんです。今回は、私が長年組み込み開発に携わってきた経験から、陥りやすい3つの落とし穴を、具体的な事例を交えながら解説していきます。冗長化構成を検討しているあなた、あるいはすでに導入しているあなたも、ぜひこの記事を読んで、今一度自社のシステムを見直してみてください。

この記事で得られること:冗長化構成の真価を見極める

この記事では、可用性冗長化構成を検討する際に避けて通れない、3つの重要なポイントを深く掘り下げます。単に「冗長化すれば安心」という誤解を解き、システム全体の信頼性を向上させるための具体的な知識と注意点を提供します。冗長化構成が抱える潜在的なリスクを理解し、それらを克服するための戦略を身につけることで、あなたの開発する組み込みシステムは、より堅牢で信頼性の高いものへと進化するでしょう。具体的な事例や現場での経験談を交えながら、理論だけでは見えてこない実践的なノウハウを共有します。可用性向上は、組み込みシステム開発における永遠のテーマです。この記事が、その追求の一助となれば幸いです。

落とし穴1:シングルポイント障害を見落とすな!

冗長化構成を考える上で、最も基本的ながら見落としがちなのが、シングルポイント障害の存在です。シングルポイント障害とは、システム全体を停止させてしまう可能性のある、単一の故障点のことを指します。例えば、電源ユニットを二重化したとしましょう。一見すると、電源が一つ故障しても、もう一つがバックアップしてくれるので安心ですよね。しかし、もし二つの電源ユニットを制御するコントローラが一つしかなかったらどうでしょうか?そのコントローラが故障してしまえば、二つの電源ユニットは宝の持ち腐れとなり、システムは停止してしまいます。これは極端な例ですが、実際には、ネットワークスイッチ、共有ストレージ、特定のソフトウェアモジュールなど、様々な場所にシングルポイント障害が潜んでいます。

データセンター内のサーバーラックの写真提案画像: データセンター内のサーバーラックの写真。特にネットワークケーブルや電源ケーブルが集中している部分を強調する。

以前、私が関わったプロジェクトで、まさにこのシングルポイント障害が原因で大きなトラブルが発生しました。ある医療機器の制御システムで、CPUを二重化し、一方が故障しても自動的に他方が引き継ぐ構成を採用していました。しかし、二つのCPUが共有するデータベースサーバーがシングルポイント障害となっていたのです。ある日、そのデータベースサーバーが突然停止し、システム全体がダウン。患者さんのモニタリングが一時的に停止するという、非常に危険な状況に陥りました。原因を調査した結果、データベースサーバーのディスク障害が原因であることが判明。二重化したCPUは正常に動作していたにも関わらず、データベースサーバーの停止によって、その効果が完全に無効化されてしまったのです。この経験から、私は冗長化構成を考える際には、システム全体を俯瞰し、全てのコンポーネントにおけるシングルポイント障害を徹底的に洗い出すことの重要性を痛感しました。冗長化はあくまで手段であり、目的はシステムの可用性を高めること。そのためには、シングルポイント障害をなくすことが不可欠なのです。

落とし穴2:フェイルオーバーテスト、本当にやってる?

システムを冗長化したら、必ず行うべきなのがフェイルオーバーテストです。フェイルオーバーテストとは、実際にシステムの一部を意図的に停止させ、バックアップシステムが正常に動作を引き継ぐかどうかを確認するテストのこと。しかし、多くの現場で、このフェイルオーバーテストが不十分なまま本番環境に移行してしまっているのが現状です。「テスト環境ではうまくいったから大丈夫だろう」という安易な考えや、「本番環境でシステムを停止させるのは怖い」という心理が、フェイルオーバーテストの実施を妨げてしまうのです。しかし、フェイルオーバーテストを怠ると、いざという時にバックアップシステムが正常に動作せず、システムが完全に停止してしまうという最悪の事態を招きかねません。

エンジニアが複数のモニターを見ながら、フェイルオーバーテストの結果を分析している様子提案画像: エンジニアが複数のモニターを見ながら、フェイルオーバーテストの結果を分析している様子。

フェイルオーバーテストを行う際には、以下の点に注意する必要があります。まず、テスト環境は本番環境とできる限り同じ構成にすること。ハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク構成など、可能な限り同じ条件でテストを行うことが重要です。次に、フェイルオーバーのシナリオを複数用意すること。単に主系システムを停止させるだけでなく、ネットワーク障害、ストレージ障害、特定のソフトウェアモジュールの障害など、様々な状況を想定したテストを行う必要があります。そして、フェイルオーバー後のシステムの動作を、詳細にモニタリングすること。システムの切り替え時間、データの整合性、パフォーマンスの変化など、様々な側面からシステムの状態を評価する必要があります。以前、私が担当したプロジェクトで、フェイルオーバーテストを徹底的に行った結果、本番環境で発生する可能性のある様々な問題を事前に発見することができました。例えば、フェイルオーバー時に特定の処理がタイムアウトしてしまう問題や、データの整合性が崩れてしまう問題などです。これらの問題を事前に解決しておくことで、本番環境でのシステム停止を未然に防ぐことができました。フェイルオーバーテストは、時間も手間もかかる作業ですが、システムの信頼性を高めるためには不可欠なプロセスです。面倒くさがらずに、必ず実施するようにしましょう。

落とし穴3:同期方式の選定、間違ってない?

冗長化構成において、主系システムとバックアップシステムの間でデータをどのように同期させるかは、非常に重要な問題です。同期方式には、大きく分けて同期方式非同期方式の二つがあります。同期方式は、主系システムでデータが更新されるたびに、バックアップシステムにも同じデータを書き込む方式です。この方式のメリットは、常に最新のデータがバックアップされているため、フェイルオーバー時にデータ損失が発生しないことです。一方、デメリットは、主系システムでのデータ更新処理に時間がかかること。バックアップシステムへの書き込みが完了するまで、主系システムでの処理が完了しないため、パフォーマンスが低下する可能性があります。非同期方式は、主系システムでデータが更新されても、すぐにバックアップシステムにデータを書き込まず、一定時間後にまとめてデータを書き込む方式です。この方式のメリットは、主系システムのパフォーマンスに与える影響が少ないことです。一方、デメリットは、フェイルオーバー時にデータ損失が発生する可能性があることです。最後にバックアップシステムに書き込まれたデータ以降のデータは失われてしまいます。どちらの同期方式を選ぶかは、システムの要件によって異なります。データ損失が絶対に許されないシステムでは、同期方式を選択する必要があります。一方、多少のデータ損失は許容できるものの、高いパフォーマンスが求められるシステムでは、非同期方式を選択することも可能です。以前、私が担当したプロジェクトで、同期方式の選定を誤ったために、大きなトラブルが発生しました。ある金融システムの開発で、開発チームはシステムのパフォーマンスを重視し、非同期方式を選択しました。しかし、本番環境でシステム障害が発生し、フェイルオーバーが発生した際、数時間分のデータが失われてしまったのです。金融システムにとって、データの損失は致命的な問題です。顧客からの信頼を失い、大きな損害賠償を支払うことになってしまいました。この経験から、私は同期方式の選定は、単に技術的な判断だけでなく、ビジネス的なリスクも考慮して行う必要があることを学びました。システムの要件を十分に理解し、最適な同期方式を選択することが、システムの信頼性を高めるために不可欠なのです。

可用性冗長化構成を成功させるために

今回は、組み込み系の可用性冗長化構成における3つの落とし穴について解説しました。シングルポイント障害の見落とし、不十分なフェイルオーバーテスト、そして不適切な同期方式の選定。これらの落とし穴を回避し、可用性の高いシステムを構築するためには、システム全体を俯瞰し、潜在的なリスクを徹底的に洗い出すことが重要です。また、フェイルオーバーテストを必ず実施し、システムの切り替えが正常に行われることを確認する必要があります。そして、システムの要件を十分に理解し、最適な同期方式を選択することが不可欠です。可用性冗長化構成は、一朝一夕に実現できるものではありません。しかし、これらのポイントをしっかりと押さえ、着実に改善を進めていくことで、あなたの開発する組み込みシステムは、より堅牢で信頼性の高いものへと進化するでしょう。この記事が、その一助となれば幸いです。

組み込みシステムの設計図や構成図を、エンジニアたちが囲んで議論している様子提案画像: 組み込みシステムの設計図や構成図を、エンジニアたちが囲んで議論している様子。

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